ダイバーのためのハンドシグナル
完全ガイド
水中でのコミュニケーションは命を守る重要なスキルです。このガイドでは、ダイビング中に使用する重要なハンドシグナルを解説します。特に緊急時やトラブル発生時に咄嗟に出せるかどうかが生死を分けることもあります。初心者からベテランまで、すべてのダイバーが知っておくべき基本的なシグナルから緊急時のシグナルまで、実践的な知識を提供します。
© 2025 PAPALAGI DIVING SCHOOL
耳抜きができない時のシグナル
シグナルの方法
耳を指さした後に手のひらをパタパタさせるシグナルを出します。手のひらパタパタは「異常がある」ことを伝える基本的なハンドシグナルです。
使用するタイミング
水深1〜3メートルは特に耳抜きがしづらいゾーンです。その日の体調によっては、経験者でも耳抜きがうまくいかないことがあります。無理に潜降を続けると危険なので、早めに伝えましょう。
応用方法
このシグナルは耳抜き以外にも使えます。レギュレーターが吸いづらい、BCDがおかしい、お腹が痛いなど、体の不調や器材の異常を伝える際に、該当部分を指さした後に手のひらパタパタを使います。
耳抜きの問題は早めに対処することが重要です。我慢せずにバディやガイドに伝え、必要に応じて「ちょっと待って」のシグナルと組み合わせて使うと効果的です。
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エア残量に関する
シグナル
エアが少ない時のシグナル
胸を拳で叩くシグナルを使います。これはエアが完全に切れたわけではなく、残量が少なくなってきたことを伝えるためのシグナルです。
ただし、実際のダイビングでは残圧計を見せて具体的な数値(例:100バール)を伝える方が一般的です。このシグナルはあまり頻繁には使われていません。
エア切れ時のシグナル
首を横切るように手で切るシグナルを出します。これはエアが切れたことを示す緊急シグナルです。
同時に「エアをください」のシグナル(手のひらを口に当てる動作)も出して、バディのオクトパスを借りる意思を伝えます。実際の緊急時には慌てて正確なシグナルが出せないこともあるので、バディは素早く対応することが重要です。
エア関係のシグナルは安全に直結するため、しっかり覚えておきましょう。緊急時でも冷静にシグナルを出せるように、日頃から練習しておくことをお勧めします。実際のエア切れ状況では相手が慌てていることが多いので、バディはサインを見逃さないよう注意し、素早くオクトパスを差し出せるよう準備しておきましょう。
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浮上したい時の
シグナル
浮上のシグナル
親指を上に向けて示します。通常の浮上だけでなく、不意に上がりたくなった時にも使用します。
パニック防止
恐怖や不安を感じたら我慢せず、早めにシグナルを出しましょう。ストレスが溜まると大きなトラブルにつながります。
正しい対応
一人で勝手に浮上せず、必ずバディやガイドと一緒に浅い方へ移動しましょう。
浮上したいと感じる理由はさまざまです。呼吸が乱れて苦しい、深いところが怖い、体調が優れないなど、その日の状況によって変わります。このような状態はある種のパニック状態であり、我慢を続けると命に関わる大きなトラブルにつながる可能性があります。
ガイドやインストラクターは浮上のシグナルを見たら、単なる予定された浮上ではなく何らかの問題があると判断し、すぐに対処してくれるはずです。安全なダイビングのためには、自分の状態を正直に伝えることが大切です。
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危険生物を知らせるシグナル
水中には触れると危険な生物が存在します。特に動きの遅い生物は触れやすく、強力な毒を持っていることがあります。危険生物を見つけた際には、拳を前に突き出すシグナルで警告します。
1
イモガイ(アンボイナ)
見た目は美しい貝ですが、刺されると死亡事故につながる強力な毒を持っています。動きが遅いため、うっかり掴んでしまう危険があります。
2
ヒョウモンダコ
手のひらサイズの小さなタコで、青い輪模様が特徴的です。かわいらしい見た目ですが、非常に強力な毒を持っており、命に関わります。
3
その他の危険生物
ウミヘビ、ガンガゼ、カサゴ類など、様々な危険生物が存在します。不明な生物には触れないことが基本です。
このシグナルを見たバディが理解できていないようであれば、表情から判断して「待って」のシグナルを出し、スレート(水中で書き込める板)に解説を書いて伝えましょう。危険生物のシグナルは命を守るために重要なので、しっかり覚えておくことをお勧めします。
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水面での緊急シグナル
手を大きく振るシグナル
水面で手を大きく振るシグナルは、緊急事態を知らせる最も重要なシグナルの一つです。ライセンスコースで習うこのシグナルは、とっさに出せるかどうかが非常に重要です。
例えば、バディが意識を失い水面に連れ上がった場合や、エア切れで水面に上がったものの、BCDに空気を入れられず浮力確保ができない場合、足が攣って泳げない場合などに使用します。
ビーチやボートにいる人には波の音や雑音で声が届かないことが多いため、大声で「助けてください」と叫びながら、このシグナルを出すことが重要です。恥ずかしさを感じるかもしれませんが、自分やバディの命を救うシグナルなので、自信を持って使いましょう。
「躊躇せずにシグナルを出してほしいですね。」
緊急時には冷静さを失いがちですが、このシグナルを出すことで早期に救助を求めることができます。
水面での緊急シグナルは、ダイビングの安全を確保するための最後の砦と言えるでしょう。
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体調不良を伝えるシグナル
体調不良を一発で伝えるハンドシグナルがあることをご存知でしょうか。体の前で大きく円を描くように手を回すシグナルです。このシグナルは数年前に公式に追加された比較的新しいハンドシグナルで、マニュアルにも掲載されています。
先に紹介した「手のひらパタパタ」のシグナルでも体調不良を伝えることはできますが、このシグナルを覚えておくとより明確に伝えることができます。円を描く動作はOKのサインと混同されることがありますが、体の前で大きく円を描くことで体調不良を示します。

体調不良は我慢せず、早めにバディやガイドに伝えることが重要です。小さな不調が大きなトラブルにつながることがあります。
ダイビング前のブリーフィング時に、使用するハンドシグナルを確認しておくことをお勧めします。特に新しいシグナルや緊急時のシグナルは、バディと事前に確認しておくことで、水中での円滑なコミュニケーションが可能になります。
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ハンドシグナルの重要性
伝達速度
適切なハンドシグナルは1秒で意思を伝えることができます。緊急時には素早いコミュニケーションが命を救います。
理解率
標準的なハンドシグナルは世界共通で、言語の壁を超えて完全に理解することができます。
誤解のリスク
正しく使用すれば、誤解のリスクを最小限に抑えることができます。明確なシグナルは安全なダイビングの鍵です。
水中でのコミュニケーションは、陸上とは全く異なります。声を出して会話することができないため、ハンドシグナルが唯一の直接的なコミュニケーション手段となります。特にトラブルが発生した際には、咄嗟に正確なシグナルを出せるかどうかが重要です。
「伝わってないなー」と感じたら、相手の表情を見て判断し、必要に応じて「待って」のシグナルを出してスレートに書いて伝えることも大切です。しかし、緊急時には時間がないため、基本的なハンドシグナルはしっかりと覚えておく必要があります。
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便利な追加シグナル:手話と数字
手話を活用したコミュニケーション
水中で魚の名前を伝えたい時、手話を覚えておくと非常に便利です。ログ付けの時に「あの青い魚は何?」と聞かれても、その場で名前が分からなければ説明が難しくなります。手話を使えば、その場で魚の特徴を伝えることができます。
数字の伝え方
水深や残圧などの数字を伝える際には、指で数字を示します。例えば、残圧80であれば、指文字で「8」と「0」を示します。「8」は指を曲げて表現することもできます。
ただし、相手が理解できないこともあるため、注意が必要です。
事前練習の重要性
新しいバディとダイビングする前に、使用するハンドシグナルを確認し合うことをお勧めします。特に緊急時のシグナルは、お互いに理解しておくことが重要です。
定期的な復習
ダイビングの頻度が少ない方は、潜る前にハンドシグナルを復習しておくと安心です。バディと一緒にシグナルを出し合って確認するのも良い方法です。
創意工夫
標準的なシグナルだけでなく、状況に応じた創意工夫も大切です。伝わらない場合は、スレートを使ったり、ボディランゲージを駆使したりして意思疎通を図りましょう。
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まとめ:命を守るハンドシグナル
耳抜き不調
耳を指さした後、手のひらをパタパタさせる
エア残量低下
胸を拳で叩く、または残圧計を見せる
エア切れ
首を横切るように手で切る + 手のひらを口に当てる
浮上したい
親指を上に向ける
危険生物
拳を前に突き出す
水面での緊急事態
手を大きく振る
体調不良
体の前で大きく円を描く
ハンドシグナルは水中での唯一の直接的なコミュニケーション手段であり、特に緊急時には命を守るための重要なツールとなります。このガイドで紹介したシグナルは、すべてのダイバーが覚えておくべき基本的なものです。
日頃からバディと一緒にシグナルを練習し、緊急時にも咄嗟に出せるようにしておきましょう。また、相手のシグナルを正確に理解し、適切に対応することも同様に重要です。安全なダイビングのためには、コミュニケーションが鍵となります。
「水中でさっと伝えられなくてモヤモヤしたことがあるダイバーは結構多いと思いますよね。
万が一のために、復習がてらバディのシグナルを出し合ってみるのもいいですよね。」
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